魔法少女 まどか☆マギカ 最終考察 その4

これ以降ネタバレ

まず、キュゥべえについて。
キュゥべえとは自称であり、正式名称はインキュベーターである、らしい。その正体は地球人類の感情をエネルギーとして利用するために地球に送り込まれた宇宙人、もしくは宇宙人が作り出した存在である。
彼は魔法少女を作り出す存在であったが、それは効率よくエネルギーを回収するために、あらかじめ希望を与え、魔法少女が魔女に変わるときの感情の落差を大きくするためであったと考えられる。むろん、感情エネルギーの集合体であるグリーフシードの回収を魔法少女にさせることによって、効率よくエネルギーを回収できるという利点もある。この魔女-魔法少女システムは改変後の新宇宙において「そんな都合のいい仕掛けがあるなら苦労しない」と自ら評したような、いわば作物が作物の世話をするという大変効率のいいシステムであることは間違いない。
ただ、結局彼は僕が当初思っていたほどには賢い存在ではなかった。常に場をコントロールできたわけでもないし、魔法少女候補がどのような奇跡を望むのかは事前にわかっているわけではなかった。それが故に、ほむらの存在も仕組まれたものではなく、単に淡々と職務を遂行したに過ぎない。つまり、それまでは素質も願いも凡庸で、特にエネルギーを発生させるわけではなかったほむらが、「やり直したい」という途方もない願いを成就できるたけのエネルギーを得た時に初めて契約を持ちかけている、のだ。
いや、そういう意味では最終回で世界がある意味破滅すると(論理的には)わかっているのに、まどかとちゃんと契約しているのは誠実ですらあると思う。
そういう意味では単なるエネルギー資源でしかないまどかに対して、「知的生命体として」説得を試みると言うのも誠実であると主張する根拠ではある。
ただ、彼自身はその種族の特性故に、彼が行っている説得は感情的には逆効果であるという点には最後まで気づけなかったという、言うなれば、巡り合わせが大変不幸だったと言う気がしないでもない。
この作品の一つのテーマであると思われる、善意のすれ違いを象徴するキャラクターといえよう。
彼の善意について補足すると、実は10話第4タイムラインにおけるまどかのような強力な魔法少女が誕生せず、じわじわとエネルギーを回収できたのであれば、彼の言う「地球人類の問題」がまさに地球人類で解決可能な範囲で収まった可能性もある、と追記しておく。

巴マミについて。
巴マミはキュゥべえと契約した(シリーズスタート時において)現役の魔法少女であり、主人公まどかと同じ中学に通う先輩である。ただし、1話以前には面識はなかった。
まず名前について。マミという名前はおそらく変身少女系魔法少女(という今作った造語)において、マスコットシステムを発明した魔法の天使クリィミーマミの主人公から来ているのかもしれない。
物語的には、最初のミスリードを担う重要なキャラクターであり、早々に退場したため、本人が知っている事象に対する説明もおそらく不十分なままであったためいろいろな部分が謎であったキャラクターだが、その謎もある程度説明されるというすばらしいアフターケアぶりなので、それを元に考察したい。
彼女は華々しい魔法少女の一面を持って登場したが、きちんとこの世界の魔法少女の持つ孤独性も体現していて、この世界の住人においてもキーキャラクターになっていることは間違いない。
中学生にとって、一つ年上、しかも最上級生というのはとてつもなく大人な存在だ。
彼女自体は(おそらく小学生の時に契約して)長年魔法少女を務めてきたことから、現実として実力はかなり高いと思われる。それは、素質も高かったのだろうけれども、純粋に自己の生存を望んだ(と思われる)願いもまたその実力を底上げしているのだろう。
短絡的な意味で、自己の生存を望んだ時点で願い事が(深層心理的にも)完結しているという珍しい例でもある。だからこそ、私生活のかなりの部分を犠牲にして魔女、もしくは使い魔退治を行っており、単純に数をこなしているのでグリーフシードの獲得数も多いのであろう。
彼女はすでに願いが成就しているので、与えられた第二の命を人助けに使うことにはためらいはないが、それも、自分の行為が人々の平安に向かって進捗して行っていると実感すればこそである。従って、それを否定された10話第3タイムラインでの絶望、そして乱心も、中学三年生という年齢も含めて考えると無理はないと思われる。
ところで、実はこの第三タイムラインにおける彼女の絶望の理由は「自分たちの同類を殺めていた自責感」ではなく「やがて自分(達)が『この世から消え去るべきもの』になる存在として再定義された失望感」であるというところは注目すべき点であろう。たとえどういう経緯であろうとも、魔女となったもの、もしくは魔女になるものは消えゆくべきなのだ、彼女にとっては。そういう意味では乱心ですらないとも解釈できる。
10話第一タイムラインにおいて、ワルプルギスの夜にむかってまどかの育成が急務だと語っているように、自分以外の魔法少女との共闘の必要性を強く感じているが、魔法少女という存在の「あやうさ」も重々承知しているが故に本編タイムラインにおいても誘うアクションとあきらめさせるアクションとが混在した不思議な行動をしているように思える。
体型から考えてキュゥべえのいう「第二次性徴前の少女の希望が絶望に変わる」タイミングを逸しており、それはいずれのタイムラインでも死亡し魔女化はすることはなかったという事象と関係があるのかもしれない。

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